相続手続き
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手続きの全体像
相続手続きは、大きく二つに分ける事ができます。
一つ目は、被相続人の法律関係の処理に関すること。ほぼ4ヶ月以内に完了しなければなりません。
二つ目は、相続財産の処理に関すること。相続税の納付期限となる10ケ月以内が目安となります。

7日以内の相続手続き
死亡届
相続が開始したら、まず死亡届(死亡診断書)を提出します。提出先は、被相続人の本籍地または死亡地の市区町村役場です。
これを提出しないと、死体埋火葬許可証が交付されず、火葬や埋葬を行うことができません。
期限は、死亡を知った日を含めて7日以内です。相続手続きの第一歩です。
公共料金(電気、ガス、水道、電話など)やクレジット会社、生命保険会社などの多くは、電話連絡をすると、折り返し必要な書類が送付されてくるようです。
遺言書の存在確認
相続を進める上で、遺言書の有無を確認することがとても大切になってきます。
遺言書がある場合には、原則として遺言書のとおりに相続が行われ(遺言相続)、遺言書がない場合には、民法のルールにしたがって相続が行われます(法定相続)。
14日以内の相続手続き
年金受給権者死亡届
被相続人が国民年金や厚生年金保険の被保険者である場合に、最寄りの社会保険事務所または年金相談センターに提出しなければなりません。
提出期限は、国民年金の場合、死亡日から14日以内です。届け出が遅れると、過払いの年金を返さなければなりません。
被相続人に支給されていない年金がある場合、未支給年金請求書も合わせて提出します。
未支給の年金は、故人と生計を同じくしていた配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹が受け取れます。優先順位もこの順番となります。
手続きには、所定の請求書のほか次の書類が必要です。
1 被相続人の年金証書
2 死亡の事実を証明する書類(戸籍謄本、死亡診断書のコピーなど)
3 被相続人と請求者の戸籍謄本、及び同一生計を証明する書類(住民票の写しなど)
遺族年金
遺族年金には、国民年金から支給される遺族基礎年金と、厚生年金から支給される遺族厚生年金(公務員の方の場合は遺族共済年金)があります。
遺族基礎年金と遺族厚生年金共に、所定の支給要件があります。
複雑ですので、分からない場合には、最寄りの社会保険事務所または年金相談センターか専門家へご相談ください。
遺族基礎年金
被相続人が死亡当時、次の3つの要件を全て満たす場合、遺族基礎年金が支給されます。
要件1 被相続人が次のいずれかである。
ア 国民年金の被保険者だった
イ 以前、国民年金に加入していた、日本在住の60歳以上65歳未満であった
ウ 老齢基礎年金の受給権者だった
エ 老齢基礎年金の受給資格期間を満たしていた
要件2
要件1のアまたはイの場合、次のいずれかの条件を満たしている。
カ 死亡日の前々月までの被保険者期間のうち、保険料納付済期間と保険料免除期間の合算が
3分の2以上である
キ 死亡日の前々月までの直近1年間に保険料の未納がない事
要件3
被相続人によって生計を維持されていた「こどものいる妻」または「こども」
サ 「こども」は18歳になってから最初の3月31日を迎えていない子、または、1級2級の
障害がある20歳未満の子
シ 結婚している子は対象とならない
ス 死亡時に胎児だった子も、出生すれば対象となる
遺族厚生年金
被相続人が死亡当時、次の3つの要件を全て満たす場合、遺族厚生年金が支給されます。
要件1 被相続人が次のいずれかである。
ア 厚生年金の被保険者だった
イ 厚生年金の被保険者期間中に初診日がある病気やけがが原因で、初診日から5年以内に死亡
ウ 1級・2級の障害厚生年金を受けていた
エ 老齢厚生年金の受給権者であるか、または老齢厚生年金の受給資格期間を満たしていた
要件2
要件1のアまたはイの場合、次のいずれかの条件を満たしている。
カ 死亡日の前々月までの被保険者期間のうち、国民年金の保険料納付済期間と保険料免除
期間の合算が、3分の2以上であること
キ 死亡日の前々月までの直近1年間に保険料の未納がない事
要件3 死亡当時、被相続人に生計を維持されていた次の遺族がいる
サ 第一順位 妻、55歳以上の夫、子
シ 第二順位 55歳以上の父母
ス 第三順位 孫
セ 第四順位 55歳以上の祖父母
寡婦年金
国民年金独自の制度です。
被保険者が夫で、その保険料納付済期間と保険料免除期間の合計が25年以上ある場合に、夫によって生計を維持されてきた婚姻関係が10年以上継続している妻に対して、60歳から65歳までの間支給されるものです。
要件
1 第1号被保険者の保険料納付期間と保険料免除期間の合計が25年以上ある
2 老齢年金等を受給していない
対象者
被相続人によって生計を維持されてきた婚姻関係が10年以上の65歳未満の妻
金額
老齢基礎年金の4分の3相当額
死亡一時金
国民年金独自の制度です。
被保険者の保険料納付済期間が3年以上ある場合に、一定の遺族へ支給されるものです。
寡婦年金と死亡一時金の両方の受給資格があるときは、同時に受けることはできませんので、有利な方を選択することとなります。
要件
1 第1号被保険者の保険料納付期間が3年以上
2 老齢年金等を受給していない
3 貴族基礎年金の対象となる遺族がいない
対象者
被相続人と生計を同じくする配偶者、子、父母、孫、兄弟姉妹の順に先順位
金額
保険料納付済期間に応じた定額
世帯変更届
世帯主が死亡した場合には、死亡した日から14日以内に、市区町村役場に世帯変更届を出す必要があります。届出人は、新たに世帯主になる人または世帯員です。
印鑑登録カード
死亡届の提出によって、印鑑登録は自動的に廃止されます。
ただし、印鑑登録カード(印鑑登録手帳)は返還しなければなりません。
健康保険
国民健康保険、後期高齢者医療制度、健康保険、共済組合、船員保険のそれぞれにおいて、保険証の返還や脱退手続きが必要です。
国民健康保険の場合、死亡した日から14日以内に届け出ることが義務付けられています。
介護保険被保険者証など、死亡によって権利を失うものは全て返還します。
葬祭費(埋葬料)
国民健康保険の例では、被保険者の死亡時には埋葬を行ったものに葬祭費5万円が支払われます。
ただし、請求する権利は2年で消滅しますので、早めに手続きを行う事をお勧めします。
3ヶ月以内の
相続手続き
遺言書の検認
自筆証書遺言を執行する為には、家庭裁判所で遺言書の検認を行わなければなりません。検認せずに開封した場合には、過料(罰金)を課せられることがありますので、注意が必要です。
これは、遺言書の偽造や変造を防止する事を目的とした手続きです。
なお、公正証書遺言の場合には、検認の手続きは不要です。
遺言執行者の選任
選任された遺言執行者は、相続財産の管理など、遺言の執行に必要なすべての行為をする権利と義務をおいます。
特に、相続人全員の協力が得られないような場合には、遺言執行者が必要です。
遺言執行者は、遺言で指定される事が多いですが、指定がない場合には家庭裁判所に申し立てて選任して貰う事ができます。
申立てができるのは、相続人や遺言者の債権者、遺贈を受けた利害関係人です。
申立て先は、遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所となります。
相続人の確定
遺産を分けようとする時に、まず必要なのは、相続人が誰なのか?を確定するための相続人の調査です。
別に調査なんてしなくても、親戚は誰々しかいないから・・という思い込みは禁物です。
相続人確認の調査を怠りますと、後で隠れていた相続人から相続の回復を請求されて、すべてがやり直しになる可能性もあります。慎重な調査が求められるところです。
後日、預金口座を解約する場合などでも、こうした調査結果が必要になる場合もあります。
相続人の調査
相続人を確定するには、被相続人の出生から死亡までの「連続した」戸籍、除籍、改製原戸籍の謄本を、被相続人の最後の本籍地で戸籍を取ることが必要となります。
婚姻や転籍、改製などによって新しい戸籍が編成されるとき、すでに除籍された構成員は省かれます。そのため、途切れることなく追跡していかないと、正確な相続人を把握できません。非常に地味な作業となりますが、この作業を繰り返して出生までさかのぼっていきます。
子ども(又は代襲者)がいない場合、直系尊属の調査も必要です。
直系尊属が全員亡くなっている場合は、兄弟の調査も必要です。
調査の結果、相続人の数が当初考えていたより増えるケースは、意外と多くあります。
戸籍や除籍の謄本は、本籍地の市町村役場の戸籍係に請求しますが、遠隔地の場合は郵便で請求することもできます。
謄本を取ることができるのは、原則としてその戸籍の構成員や直系親族などです。
行政書士は、職権により調査を代理する事ができます。
相続財産の確定
相続人が確定したら、次のステップは、どんな財産が、どれくらいあるかを把握することです。
最終的には、相続財産目録としてまとめます。
プラスの財産のみならず、マイナスの財産についても把握する必要があります。
主な財産の種類
自宅(土地、建物) 貸家(土地、建物) 現金 預貯金 借金 ローン
株式 債権 投資信託 生命保険金 死亡退職金 ゴルフ会員権
自動車 書画・骨董品 家財一式
相続の承認
単純承認
特に何もする必要はありません。
限定承認・相続放棄
被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に、申述します。
相続人に未成年や成年被後見人が含まれている場合には、法定代理人が申述します。
相続放棄は相続人単独でできますが、限定承認は相続人全員の合意が必要です。
4ヶ月以内の
相続手続き
所得税の準確定申告
被相続人が自営業を営んでいた場合など、確定申告をしていたような場合には、順確定申告の手続きが必要です。申告期限は、相続開始を知った日の翌日から、4ヶ月以内です。
被相続人が未申告の分が残っていれば、合わせて申告をしなければなりません。
順確定申告は、被相続人が連署して、所轄の税務署へ申告します。
申告書の作成方法などは、通常の確定申告と基本的には同じものです。
10ヶ月以内の
相続手続き
遺産分割
相続に関する協議内容の重要な証拠となる文書です。相続登記や相続税の申告、預金口座の解除、自動車の名義変更など、様々な場面で遺産分割協議書の提示が求められます。
相続が発生した以上、避けては通れない最重要文書と言えましょう。
全ての相続人が自署し、実印を押印し、各自の印鑑証明を添付します。相続人の人数分作成し、各自が一通ずつ保管します。
名義・登記変更
遺産分割協議書に基づき、名義や登記を被相続人から相続人へ変更します。
不動産の変更は、相続登記と言われていますが、不動産は登記をしていないと、例え所有権を持っていても、第三者に所有権を主張できない場合もあります。相続した不動産の所有権を確実に主張する為にも、速やかに手続きを行いましょう。
自動車の場合には、車検証に記載する使用の本拠地を管轄する運輸支局・自動車検査登録事務所にて、名義の変更(移転登録と言う)が必要です。罰則もありますので、速やかに手続きを行いましょう。
相続税の申告と納付
相続した財産の総額が基礎控除額を超えている場合には、財産を取得した人は相続税の申告と納付が必要です。反対に、基礎控除額を超えていない場合には、申告の必要はありません。
ちなみに、相続税が発生するのは、相続全体の4%程度です。
3年以内の
相続手続き
遺留分減殺請求権
遺留分が侵害されている場合、自分が相続すべきだった財産を取り戻すことができます。
相続が開始した事および減殺すべき贈与・遺贈のあった事の両方を知った日から1年(除斥期間10年)以内に、意思表示をする必要があります。
意思表示には、一般的には内容証明が用いられています。
遺留分減殺請求をしても、相手方が財産を返還してくれない場合には、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所の遺産分割調停を利用します。
申立てができるのは、遺留分権利者と遺留分権利者の承継人です。
生命保険金の請求
受取人は、保険会社から交付されている「保険証券」や「約款」、「ご契約のしおり」等を確認した上で、コールセンターなどへ連絡を入れます。
一般的には、必要書類の案内などが、折り返し郵送されてくるようです。