財産分与
財産分与できるもの
不動産や家具、自動車など。婚姻中に共同で得た財産であるものです。
名義人が夫であろうと妻であろうと、関係ありません。マンションや自動車のローンが支払い中(マイナスの財産)であったとしても、分与の対象となります。
他には、銀行預金や年金、保険の積立金やこどもの学資保険、将来支払われる事が確定している退職金などです。
保険については途中解約のデメリットを考慮し、名義変更などによる分与が現実的です。
婚姻前に夫または妻が購入していたマンションに婚姻後同居することになった場合、このマンションは婚姻中に共同で得た財産ではないため、財産分与の対象とはなりません。
アパート等の賃貸借契約をしている場合でも、財産分与は可能です。
通常、“賃貸借を転貸した場合には契約を解除する”旨の取り決めがありますが、離婚による夫婦間の移転については「賃貸人と賃借人の信頼関係が破壊されているとはいえない」として、判例上、移転が認められています。
例えば、賃借人名義が夫である場合で、夫がアパートを出て行き妻と子が残るという場合、妻と子は引き続きアパートに住むことが出来るのです。勿論、大家さんから離婚を理由として一方的に契約解除することはできません。
財産分与できないもの
婚姻中に共同で得た財産でないもの(特有財産)は、財産分与の対象になりません。
婚姻前から持っていた貯金や車などです。
相続財産については、婚姻中であっても特有財産となります。分割対象となりませんが、既に費消しているときは、注意が必要です。
他には、妻の洋服やバック、指輪など日常生活において単独で使用しているアクセサリーや夫のみが使用するゴルフクラブ等です。
婚姻中に一方が勝手に作った借金についても、特有財産として財産分与の対象とはなりません。
財産が無くとも
財産が全くないにも関わらず、小さなこどもを抱えており且つ待機児童の問題で保育所に預けられず仕事ができない等の事情がある場合、扶養してもらうための扶養的財産分与という権利が認められる場合があります。
扶養的財産分与は、財産が無いにも関わらず認められる権利ですので、離婚後でも、生活ができるだけの資産がある場合や離婚時において有責性が非常に高い場合には、原則として認められません。
“生活ができるだけの資産”については、一般的には、離婚時の慰謝料と養育費等で当座の生活費をまかない、離婚後の児童扶養手当(こども手当)の支給、並びに就職することにより生活費がまかなわれるとされ、扶養的財産分与を積極的に認めるという傾向にはないようです。
近年、熟年離婚の増加に伴い増えている争点でもあります。
財産分与の時期
財産分与とは、婚姻中に共同で得た財産を分けることです。
従って、離婚協議を開始した時点を起算点とするケースが多い傾向にあります。
別居期間が長期にわたっている場合には、別居時を起算点とするケースが多い傾向にあります。
離婚時に財産分与をしなくとも、離婚から2年が経過するまでの期間であれば、請求が可能です。
請求をしても相手方が全く応じなければ、家庭裁判所へ調停もしくは審判を起こすという選択肢もありますし、不成立になったときには裁判も可能です。
贈与税
離婚に伴う財産分与を金銭で支払う場合、事情を考慮して贈与税が非課税となります。
常識的に考えて多すぎる場合は課税対象となりますが、常識的な範囲内での財産分与であれば、税金が発生することはありません。
婚姻期間が短い方で不動産を分与する場合には、注意が必要です。
分与する側には譲渡所得税が、受け取る側には不動産取得税や登録免許税が課せられます。